独立診断士のリアル

2018年5月に中小企業診断士として独立。仕事や収入のことなど。

信用保証協会の専門家派遣事業の仕事

顧問先のない駆け出し診断士にとってありがたい仕事の1つに『信用保証協会の専門家派遣事業』という仕事がありますので、そのことについてまとめておきます。

 

 

専門家派遣事業の概要

この事業の目的は様々な課題を抱える中小企業に対して、信用保証協会が中小企業診断士や税理士らを派遣し、中小企業の経営改善や成長発展を促進することです。中小企業の費用負担はゼロ。専門家に支払われる財源は補助金で賄われています。信用保証協会が中小企業診断士協会に業務委託していることが多いのですが、都道府県によっては民間のコンサル会社や税理士法人に委託しているところもあります。

診断士は何をするのか

保証協会が診断士に求めることは単なる診断業務からがっつりリスケを伴う経営改善計画書作成まで幅広いレベルのものがあります。具体的に言うと、まずは、財務分析、SWOT、ファイブフォースなどのフレームワークを使って現状分析をします。私は特にSWOTに時間をかけています。コーチングの要領で質問を多用して、社長に目一杯しゃべってもらいます。ここで強みと機会をなるべくたくさん引き出しておかないとポジティブな戦略が立てられないからです。派遣回数が短い場合は現状把握と戦略立案までで終了することもあるのですが、10回以上の派遣の場合は戦略実行のサポートもします。私が今までサポートした例をあげると、飲食店のサービスマニュアル作成、医療機関の厚生局提出用の申請書類作成、飲食店のチラシ作成、整骨院の資金繰り表作成、薬局の経営改善計画書作成などがあります。特に経営改善計画書は骨が折れます。零細企業の場合は社長個人の借入れについても計画書に組み込む必要がある上、金融機関の顔色も伺いながらすり合わせていく必要があるからです。

診断士に支払われる報酬

都道府県によって異なり、3時間当たり3万~4万くらいです。派遣回数は都道府県ごとにまちまちで、私の所属するエリアでは4回コース、10回コース、16回コースなどがあります。つまり報酬総額は、おおよそ十数万円~50万円といったところです。また、毎回クライアントに会わないと1回分とみなさないところもあれば、報告書類の作成だけでも1回分とみなすところもあります。つまり、16回のうちクライアントに会うのが10回、事務所で書類作成が6回でもOKということです。これも都道府県ごとに扱いが異なるようです。それと、私の属するエリアでは交通費は自己負担です。派遣先が車で往復3時間なんてこともざらで効率性の悪さが悩ましいところです。

経営者のスタンス

経営者が専門家派遣事業をどう思っているかについて述べておきます。経営者にとっては無料でコンサルが受けられるのでさぞかし有難がられているだろうと思いますか?まあ、そういう経営者もいるにはいるでしょう。しかし、有難迷惑と考えている経営者もいるのです。なぜか?信用保証協会は専門家派遣事業として与えられた予算を年度内に使い切ろうとします。この場合、保証協会が金融機関と相談して半ば一方的に企業を選択することがあります。企業も融資を受けている手前(返済が停滞している場合はなおさら)これを断りにくいのです。実際、私が担当している居酒屋のオーナーは「当初、あんたと会うのが憂鬱でしょうがなかった」と私に打ち明けています。

診断士のスタンス

専門家派遣事業は、私のような「金なし、経験なし、コネなし、顧問先なし」の診断士にとって、まとまった報酬と経験が得られる絶好の機会です。しかも、信用保証協会や金融機関に自身の仕事ぶりが筒抜けになるため、良い仕事をすれば顧客の紹介など新たなチャンスを得られる可能性も高くなります。うまくいけば派遣先から顧問の依頼を受けられる可能性もあります。専門家派遣事業に限ったことではありませんが、診断士は与えられた仕事に全力で取り組むことが次のチャンスを生み出すのです。先日、前述の居酒屋オーナーと呑んだのですが、「今は、あんたと会うとやる気が出てくる」と言っていただきました。鳥肌がでるほど嬉しかったです。

 

今日も新たな案件の依頼が入りました。小さな豆腐屋さんです。何かの参考になるエピソードができたらまた報告します。